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これまでの大科学実験

実験35「人間上昇気流」

空気は温められると、軽くなって上にあがる。その上昇気流を、人の体温で作れるか、実験する。

コラム今回の実験 「人間上昇気流」

 「上昇気流」とは難しそうな言葉ですが、字の通り、上に昇っていく空気の流れのことです。お天気の勉強をすると、必ずこの言葉が出てきます(上昇気流が生じると、その上空に雲ができて、お天気は悪くなります)。

 実験02「空飛ぶクジラ」のときにも書きましたが、温かい空気は軽くなって上にあがっていきます。男性たちの体温で温められた空気が上に行き、その流れが風車を回したわけです。でも、3mの高さでも回るというのは、スタッフもやってみて初めてわかったそうですよ。

 番組では「体温の高そうな男たち」と言っていましたが、具体的にはどういうことでしょう? 男性たち(熱源ズと呼ばれていたそうです)はいかにもスポーツマンタイプの体つきでした。ほとんどの場合、気温は体温(約37度)よりも低いので、私たちの身体は体温を保つために熱を作りだしています。メインの発熱装置は肝臓と筋肉です。身体を動かしたりして体温が上がると、今度は皮膚からせっせと体熱を発散させます。

 個人差はありますが、一般に、男性は女性よりも脂肪が少なく、筋肉が多いのが普通です(皮膚のすぐ下にある皮下脂肪というタイプの脂肪です)。今回の実験の場合、熱源ズたちはほとんど動いていませんから、筋肉の多さよりも皮下脂肪の少なさのほうがポイント。脂肪は熱を伝えにくい性質があるため、体内で発生させている熱が逃げにくいのです。

 寒い海に暮らすアザラシはたっぷりの脂肪を蓄えていて、これが断熱材の役目をしています。ペンギンの身体に雪が降り積もっている写真を見たことがありませんか? 鳥では羽毛が断熱材となります。アザラシの下の氷やペンギンに降る雪がなかなかとけないのは、体温が外に漏れ出ていない証拠なのです。

 番組を見ているだけではわかりませんが、収録のときの空調の設定温度は9度。東京や大阪での12月の平均気温とだいたい同じです。もちろん、天井のライトも通常のものから、熱をほとんど出さないLEDに交換しています。そして、熱源ズは空気を温めやすいように半袖・裸足。着ているものも薄手。むやみに動くと空気の流れが生じてしまうので、動いて身体を温めることもできません。実は、熱源ズたちには過酷な収録現場だったのです。

詫摩雅子/日本科学未来館

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