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これまでの大科学実験

実験48「水上競技会」

でんぷんと水を混ぜた液体は、力が加わると固くなる。この性質を使って、液体の上で、競技ができるだろうか。

コラム今回の実験 「水上競技会」

最後の金メダルに「DILATANCY」と書かれていたのに、気がつきましたか? 「ダイラタンシー」という言葉は初めての方が多いと思いますが、今回のテーマとなった現象のことです。細かな粒と水の混合物に強い力を加えると、硬くなります。力を加えるのを止めると、またとろとろになります。この現象が、ダイラタンシーです。

地震のときに話題になる「液状化現象」も広い意味でのダイラタンシーですが、逆のことが起きるので、区別して「負のダイラタンシー」と呼んだりします。

固くなる方のダイラタンシーでは、水の中に粉の粒がすき間のないくらいみっちりと入っているのがポイント。水はわずかなすき間に入って、全体の流れを良くする潤滑剤の役目をしています。強い力がかかると、それに応じて水や粒は移動しようとしますが、粒はお互いを乗り越えないと移動できないため、かえって粒どうしのすき間が広がります。水はそのすき間に入ろうとしますが、すぐには入り込めないため、広がったすき間が元に戻ろうとして、粉の粒を引き寄せる力が生じます。このために、一時的に固くなるのです。力を加えるのを止めると、水がしみこみ、元のとろっとした状態に戻ります。

液状化のような負のダイラタンシーは、粒がそこまでたくさん入っていない場合に起きます。振動で粒が動くと、下にきちんと並ぶようになります。粒どうしの間隔は振動前よりも小さくなり、すき間を埋めていた水が上に出てきます。

全部で52回の「大科学実験」のうち、「準備が一番しんどかった」とスタッフが言ったのがこの回でした。でんぷんと水を混ぜたものを用意するわけですが、常に混ぜていないとダマができるのだとか。しかも、攪拌機などを使うと、そこに力がかかったことになって固まってしまい、すぐに刃が立たなくなったそうです。

さらに、コントラストの美しさを狙って、白いでんぷん水の周囲を黒一色にしたのに、まわりに飛んだでんぷん水は「拭いても拭いても白く残った」のだそうです。

冒頭のアクリルの箱に用意したものは、かなりとろみがついていましたが、大実験でのものは最後まで水っぽいまま。それというのも、前日までの作業分の半分がかちんこちんに固まり、まったく水を吸わなくなったのだとか。この部分を捨てたため、理想的な配分よりも水が多い状態になってしまったのです。

力を加えても固まるようにはとても見えず、選手たちも尻込みをするほど。選手に怪我は禁物ですから、無理もありません。「どうする?」という雰囲気になり始めたときに、ひとりの選手が「やってみましょう!」と言って、見事に成功。これに、ほかの選手も次々と続きました。スタッフは最初の選手のことを「あの時、彼がやろうと言ってくれなかったら」と今でも感謝しています。

詫摩雅子/日本科学未来館

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