やってみなくちゃわからない!ホソノ

これまでの大科学実験

実験51「剛腕の水蒸気」

水を熱すると出る水蒸気。その勢いでボールが飛ぶか実験する。

コラム今回の実験 「剛腕の水蒸気!」

今回のテーマは蒸気の力。「大科学実験」への登場は初めてですが、関連した実験がありました。実験44「熱で動く鉄」です。あの回の本編が始まる前に、鉄筒が大きく暴れる映像が入っていたのを覚えていますか?

実験44「熱で動く鉄」の回にも書きましたが、鉄筒が暴れたのは、中に水かアルコールが残っていたせいだろうとスタッフは考えています。水が熱せられて水蒸気になると体積は1000倍以上にもなりますから、中はかなりの圧力になります。中が空気だけならば、あそこまでの爆発的なことは起きません。

今回の大実験ではまさに「爆発的なこと」をしました。

装置の全体像がわかりにくかったかも知れませんね。水を入れていたのは、ガラスの試験管とほぼ同じ大きさのステンレスの筒です。ガラスでは圧力に耐えられずに割れてしまうので金属にしました。これに温度計と圧力計を差し込んであり、コックで開け閉めできるようになっています。どれも高圧に耐えられるようにした特別加工です。

ボールを飛ばす大実験では、コックを開けたときに飛び出す水蒸気がそのままボールを入れた別の筒に伝わるようになっています。ボールも筒にピッタリと収まるサイズ。今回の実験は、すきまがあると蒸気が逃げてしまうので「ピッタリと」は重要です。

筒を固定しておかないと、ボールが飛び出す勢いで、筒も後ろに飛びます。前後には人が立たないようにと監修の研究者から何度も念押しをされたそうです。筒を熱するときも横からしています。

筒の中で熱せられた水はどういう状態になっていたと思いますか? 水は100度で沸騰するから、中は蒸気だらけだった? 実は違うのです。100度を超える液体の水だったのです。

水が100度で沸騰するのは、1気圧のときだけです。富士山の頂上では気圧が低いので、90度くらいで沸騰が始まります。逆に、気圧が高いところでは水は100度を超えても液体の水のままでいます(圧力鍋はこれを利用して、高温で煮炊きをします)。180度に熱したとき、筒の中は10気圧もの高圧になっていました。この気圧だと、100度を超えても液体のままの水でいられます。

コックを開けると、10気圧からいきなり1気圧になり、水は一気に水蒸気になります。「フラッシュ爆発」と呼んでいます。あのとき、まさに爆発が起きていたのでした。

ところで、キャッチャーの横にスピードガンをもった実験レンジャーがいたのに、気がつきましたか? 180度に熱した実験では、飛び出した瞬間のボールの速さはプロ野球投手の最速記録をも上回っていました。もし、軽いゴムボールでなく野球のボールだったらもっと飛んでいたでしょうね。

詫摩雅子/日本科学未来館

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